テレビCMも打っている。チラシも配っている。電車広告も出している。地域での知名度も、決して低くはない。
それなのに、予約数が思うように伸びない。
医療機関の経営に携わる方であれば、一度は感じたことのある感覚ではないでしょうか。
山口県山口市にある山口総合健診センター様も、まさにこの状態にありました。紹介とテレビCMによって地域の認知は確保できている。それでも人間ドックの予約者数が飛躍的に伸びるわけではなく、季節による波もある。
株式会社メイトは2026年5月より、同センターの人間ドック新規集客を目的としたMeta広告の運用を開始しました。結果、6月の人間ドック予約者数は前年の906人から1,138人へ。前年比約125%となっています。

案件概要
一般社団法人 山口総合健診センター(山口県山口市小郡下郷)
目的:人間ドック新規集客
支援内容:LP制作/Meta広告(Instagram・Facebook)
期間:2026年5月〜現在(※2026年8月時点)
まず最初に行ったのは、広告制作ではありません。
なぜ予約に至らないのかを、段階に分けて洗い出すことでした。
認知から予約までのあいだには、いくつもの段差があります。
テレビCMやチラシは、このうち最初の「知る」段階にしか効きません。
認知施策を行っても、2段目以降の段差が残っている限り、予約数は頭打ちになります。

同センターの場合、認知はすでに十分でした。だから私たちが取り組むべきは、認知の量を増やすことではなく、認知の先にある段差を一つずつ外していくことだと判断しました。
この判断が、以降のすべての設計の起点になっています。
チャネル選定において、私たちはリスティング広告を主軸から意図的に外しました。
医療機関のWeb集客というと、まずリスティング広告が候補に挙がります。しかし今回は、次の2つの理由から採用していません。
① 検索している層は、すでに獲得できていた
同センターは「人間ドック 山口」といった主要キーワードで、すでに自然検索で上位表示ができていました。つまり、検索という行動を起こした人にはすでに届いている状態です。
ここにリスティング広告を重ねても、獲得できるのは本来なら自然検索から来ていた人です。新規の上積みではなく、流入経路の付け替えにしかなりません。
② 効果測定が難しく、大きな変化に繋がらないと判断した
自然検索とリスティングが同一キーワードで並ぶ状況では、どちらの寄与で予約に至ったかを切り分けられません。数字が読めない施策は、改善のサイクルを回せません。
投じた予算に対して測れず、伸びしろも小さい。
この2点から、リスティングは主軸に据えるべきではないと結論づけました。
代わりに狙ったのは、「そろそろ受けたほうがいいかな」と思いながら、まだ検索していない層です。この層は検索窓の前に現れません。こちらから届けにいく必要があります。だからMeta広告でした。

ここが、今回の成果を分けた最大のポイントです。
「潜在層を狙う」という言葉は、施策としてはまだ何も決めていないのと同じです。潜在層だからといって、みんな同じ考えやニーズを持っているわけではありません。同じ「まだ受診していない35歳以上」でも、動かない理由はまったく違います。
・金額を知らないから動かない人:人間ドックは3万円かかると思い込んでいる。補助制度の存在を知らない。
・必要性は分かっているのに後回しにしている人:金額の問題ではなく、「まだ大丈夫」という先送りの心理が壁になっている。

この2つは、同じ広告では動きません。
「安いですよ」と言われて動く人と、「そのままで大丈夫ですか」と問われて動く人は、別の人間です。
私たちはこの「動かない理由」を軸にペルソナを分解し、理由の数だけ入り口を用意するという方針を立てました。
人間ドックは「今すぐ予約する」商材ではありません。家族と相談し、仕事の休みを調整し、そのうえで予約に至ります。検討期間が存在する商材です。
にもかかわらず、多くの医療機関の広告は「今すぐ予約」の導線しか持っていません。広告を見たその場で行動できる人だけを取りに行けば、当然、大多数を取りこぼします。
そこで私たちは、広告の遷移先に専用LPを制作したうえで、公式LINEへの友だち追加を重要指標に設定しました。すぐに予約できない人と「つながった状態」を維持し、検討が進んだタイミングで背中を押せる設計です。

この導線が機能しているかどうかは、感覚ではなく実測で確認しています。LINEへの遷移クリックのうち、約50%が実際の友だち追加に至ること(5月実績:393クリックに対し実追加200名)。そこから来院予約への転換が70〜80%で推移していること。
測れない施策は、改善できません。設計段階で「何をもって成功とするか」を定義し、それが取れる状態を作っておくことが、運用の質を決めます。
そして、ここまでの設計——課題の段階分解、ペルソナの分解、導線の整備——がすべて固まって、はじめてクリエイティブの制作に入ります。分解した「動かない理由」に対応する形で、複数の入り口を用意しました。
クリエイティブは、設計を目に見える形にする最後の工程です。逆に言えば、ここまでが曖昧なままデザインに着手すると、何を作っても当たりません。世に出ている「なぜか成果の出ない広告」の多くは、クリエイティブの巧拙ではなく、その手前が空白であることに原因があります。
配信初月(2026年5月11日〜31日/21日間)は、インプレッション261,825、クリック4,716、CTR1.80%。コンバージョンはLINE追加・メール・電話の合計448件(CV率9.50%)で、うちLINE追加が393件、CPA¥868でした。
実際にLINE追加まで至ったのは200名(約51%)、そこから70〜80%が来院予約に進み、初月で約140〜160名、予約1件あたり約¥2,100〜2,400です。
医療分野のMeta広告CTRはトラフィック目的で0.83%が中央値(WordStream 2025)、LPのCVRは全業種中央値6.6%(Unbounce 2024年版)で、いずれも上回りました。
参考文献
[1]WordStream, “Facebook Ads Benchmarks 2025″(2025年9月15日更新/調査期間:2024年4月〜2025年6月/米国内のMeta広告キャンペーン554件/中央値)
https://www.wordstream.com/blog/facebook-ads-benchmarks-2025(2026年7月29日閲覧)
[2]Unbounce, “Conversion Benchmark Report” 2024年版(調査期間:2023年7月23日~2024年7月23日/専用LP41,000件超/中央値)
https://unbounce.com/conversion-benchmark-report/(2026年7月29日閲覧)

そして、ここからが本題です。
入り口ごとの内訳を見ると、獲得数の大半は「金額」を軸にしたものでした。「まだ大丈夫」と先送りしている層に向けた入り口の獲得数は、それと比べれば小さな数字です。
しかし、その先送り層に向けた1本のコンバージョン率は12.00%。全クリエイティブ中で最も高い数字でした。
クリックする人数は少ない。けれど、クリックした人が実際に行動へ移す確率は最も高い。これは「広く浅く」ではなく「狭く深く」刺さっていたことを意味します。設計時の仮説どおり、金額では動かなかった層を確かに拾えていたということです。
獲得数やCTRだけを見て「この訴求は効かない」と判断していたら、この層への入り口を、自ら閉じることになっていました。
役割が違うクリエイティブは、評価軸も違って当然です。単一の指標で足切りをする運用は、取れるはずだった層を静かに捨てています。

さらに翌6月、配信条件を変えた環境下で、この入り口のCTRは3.08%まで上昇し、全クリエイティブ中トップになりました。
「効かないクリエイティブ」だったのではありません。「その配信条件では前に出なかった」だけだったのです。
届ける相手が変われば、響く言葉も変わります。だからこそ、複数の入り口を最初から絞り込まずに走らせる価値があります。
運用フェーズで私たちが見ていたのは、「どれが勝ったか」ではありません。「どの入り口が、どの条件で機能するか」です。
数値を継続的に確認しながら、機能している組み合わせに資源を寄せ、機能していない条件を見極める。この積み重ねに2ヶ月をかけて、「型」を作りました。
型ができてから、7月に配信エリアを拡大しています。通常、配信範囲を広げれば「刺さる人」の密度が下がり、効率は悪化します。しかし今回は、拡大後も効率を落とさずに推移しています。
検証フェーズで型を作り、拡大フェーズで横展開する。順序を守ることが、拡大時によくある失速を防ぎます。

6月の人間ドック予約者数は1,138人。前年同月の906人から、約125%となりました。
この125%が業界の中でどの程度の水準なのか、市場全体と比べてみます。

矢野経済研究所の調査によれば、国内の健診・人間ドック市場は2024年度が前年度比101.6%、2025年度予測が101.3%。同社は市場を「安定成長局面に入った」と評価しています。つまり業界全体では、年1〜2%の成長が「順調」とされる市場です。
その中での125%は、市場の追い風に乗った結果ではありません。
集客チャネルが構造的に1つ増えたことによる「仕組みの成果」です。
再現性のある新たな顧客接点を獲得したからこそ、この突出した数字が生まれました。
本施策は月額30万円規模からスタートし、数値を確認したうえで60万円規模へ増額しています。
この金額をどう見るか。施設側の試算では、費用対効果は800%以上という結果になっています。
さらに言えば、人間ドックはリピート受診が前提の商材です。初回の獲得コストを回収した後、2年目以降の受診は上乗せになります。単月の費用対効果だけでは、この施策の価値は測りきれません。
広告費は「費用」ではなく「投資」として設計するというのが、私たちの考え方です。だからこそ、投じた金額に対して何が返ってきたのかを、常に測れる状態にしておく必要があります。
※ 費用対効果は施設側の試算に基づく数値です。算定方法・単価構成により変動し、同等の成果を保証するものではありません。

今回の成果は、優れたクリエイティブを1本作ったから生まれたものではありません。
① 課題を「認知不足」で片付けなかった。
認知から予約までを段階に分け、どこで止まっているかを特定するところから始めました。
② 使わないチャネルを、理由をもって決めた。
リスティング広告は、すでにSEOで獲得できていること、効果測定が難しく大きな変化に繋がらないことから、主軸から外しました。何をやるかと同じくらい、何をやらないかが結果を左右します。
③ 「潜在層」で思考を止めなかった。
動かない理由の数だけ、入り口が必要です。ここを分解できるかどうかが、クリエイティブの質を決めます。
④ 測れる状態を、設計段階で作った。
何をもって成功とするかを先に定義し、それが取れる導線を組みました。測れない施策は改善できません。
クリエイティブは、これらすべての結論として最後に現れるものです。
順序を逆にすると、成果は出ません。
株式会社メイトでは、医療機関・健診施設の集客支援を行っています。
こうした課題をお持ちでしたら、まずは現状をお聞かせください。貴院の状況を伺ったうえで、どこに課題があるのかの整理からご一緒します。
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